良くも悪くもマイルス・グループへの参加が大きな転機になってしまったロベンだが,彼の指向するのは本作で聴けるような,さらにアーシーなブルース・スタイル。ジョーダン,ドレイトン,ウォレスが生み出す強力なウネリに乗せて自由奔放に弾きまくる。★ 

ダニー・コーチマーをプロデューサーに迎えた前作での変容の予兆が、本物になった。ブルー・ラインというバンドの符号を取り払った、久しぶりの単独名義作品である。大きな違いは、ブルースに根ざしながら、その解釈や表現をより多次元的に広げたこと。ロベン本人は、MG’sを引き合いに出しているが、それだけに終始するような平坦なものじゃない。アーシーでスピリチュアルな音の輝きを体現しようとする誠実さが、アメリカにあるブルースの風景を今まで以上に深く読み込んだ成果がここにある。それも、今回はすべてインスト(エキストラの(11)(12)を除く)。つまり、全曲をギターだけで言い表わそうとした。ヴィンテージのストラトとレス・ポールを持ち出したのもそのためらしいが、そんなことは皮相な一面にすぎない。随所でサザン・ブルースとクラプトンやレイ・ヴォーンらとのかかわりを浮き上がらせながらも、衛生的で薄味にならずにいる音の濃度にこそ厳重警戒。まだまだブルースから多くを学べる。 (成田正) — 1997年06月号 (CDジャーナル)

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