ギター・ヴァーチュオーゾのジョー・パスの出世作。“シナノン”とは、麻薬療養所の名称。そこでパスは薬禍を克服して、ジャズ界に返り咲いた。プレイ・スタイルもがっちり固まり、テクニックも申し分なし。全員がシナノン仲間というのが、やけに胸打たれる。(CDジャーナル)

60年代初期、度重なる麻薬療養生活を経てリリースされたジョー・パスのデビュー・アルバム。療養中の演奏を聴いたパシフィック・ジャズのリチャード・ボックとの契約がきっかけで本作の録音に至り、この時パスは30歳をとうに過ぎていた。その分、パスのこのアルバムでの存在感は際立っていて、フレージングやギターのトーンなどほぼ確立された感がある。全般を通して貫かれたバップ・スタイル。アフロ・キューバンのテーマの(1)では淀みなく流暢に、またスロー・ブルース(2)のどっしりとタメの利いたギターなど、各スタイルごとの使い分けも見事だ。そしてどのソロを聴いてもわかる各音の粒立ちの良さ。このあたりがギター・マスター、ヴァーチュオーゾと呼ばれるゆえん。本作リリース後の63年にパスは『ダウンビート』誌の新人賞を獲得しているが、まさに遅すぎた逸材と言うべきだろう。タイトルの“シナノン”はパスが入っていた麻薬療養所の名前。(8)がボーナス・トラック。 (渡辺昌美) — 2002年09月号

 ・ Sounds of Synanon / amazon.co.jp

 ・ Spotify : Joe Pass : Sounds of Synanon / サウンズ・オブ・シナノン